【レポート】第11回うえだ移住テラス~talk cafe~ ゲスト:玉崎さん

2023年9月2日(土)、上田市の移住交流サイト「うえだ移住テラス」の定期イベントとして「うえだ移住テラス~talk cafe~」を開催しました。

今回のゲストは玉﨑修平さんです。

東京都生まれ神奈川県横浜市育ち。2020年10月、棚田好きがきっかけで日本の棚田百景の一つ「稲倉の棚田」を担当する地域おこし協力隊に着任。2022年には玉﨑さんが活動を共にしている稲倉の棚田保全委員会が農林水産祭のむらづくり部門で「天皇杯」を受賞。

前職はインテリアデザイナーとしてご活躍されていた玉﨑さん。棚田とのご縁、魅力、今後の活動についてお話しを伺いました

聞き手はAREC専務理事・センター長 岡田基幸です。

左:岡田、 右:玉崎さん

――棚田にご興味を持ったきっかけをお聞かせください。
テレビで放映されていた「棚田オーナー制度」を知ったことがきっかけです。一回訪れてみたくなり、実際に稲倉の棚田での田植えに参加しました。素足で泥水に浸かった瞬間の感触、湧き起こる童心の記憶…とても気持ちが良かったです。当時はコンピューターを使った仕事だったのですごく良いリフレッシュにもなりました。それから毎年のように仕事関係や友人家族を誘って、田植えや稲刈りの度に上田を訪れていました。

――全国各地に棚田がありますが、なぜ上田を選ばれたのですか。
いろいろな理由がありますが、歴史が好きで真田氏の歴史に惹かれたことと、趣味のロードバイクでも来られる距離だったことです。

――東京から自転車で稲倉の棚田へ…ですか?!
はい!東京から上田が約200kmで、自転車だと半日で来られます。都内から自転車で棚田に来る人はいないので、地域の方に囲まれ、親交も深められました。初めて稲倉の棚田を訪れたのは2008年です。

――棚田の保全に関わるようになったきっかけは何でしょうか。
稲倉の棚田のオーナーになって、棚田にハマりました。都内で暮らしていても「NPO法人棚田ネットワーク」という組織に顔を出し、棚田に関する活動のお手伝いや全国の棚田関係の方とも繋がることができました。根っからの「棚田人間」です!

――前職との関係から稲倉の棚田の構造にもご興味があったのでしょうか。
そうですね。都市デザイン関係を学んでいたので形状・カタチにも興味を覚えました。中国やインドネシアにも棚田がありますがダイナミックというか…雰囲気が異なります。日本の棚田は日本昔ばなしに出てくるような癒しの風景ですね。

――岡崎酒造さんとの繋がりもあるのですね
稲倉の棚田では半分が酒米を育てています。長野県のブランド「ひとごこち」です。元々、岡崎さんは棚田のオーナーさんでした。そういったご縁もあり、酒米は全て岡崎酒造さんに入れさせてもらっていて「稲倉の棚田産のひとごこち・純米吟醸」として販売されています。

――稲倉の棚田といえば、キャンプも人気ですね。棚田でキャンプをはじめたきっかけを教えてください。
元々、田んぼの中でキャンプをしたいという思いがあり、田植え前の5月と稲刈り後の11月の年2回、イベントとして企画しました。参加者の方からは「棚田は段になっているので、前のテントで景色を遮らないのが良い」とおっしゃってくださいます。稲倉の棚田は上田・菅平インターからのアクセスがとても良いので車で来やすいです。

――地元の方と交流をされていく中で地域おこし協力隊として着任されたのですね。
そうですね、棚田オーナーとして通うなかで、「移住したいな」と思っていました。3代目棚田担当の地域おこし協力隊の募集があることを教えていただき、応募しました。

――移住後の上田の印象はどうでしたか?
同じ豊殿地域でも場所によって、特色が違うので一括りに「地方」や「上田」と表現することは難しいなと思いました。

――昨年(2022年)受賞された天皇杯についてお聞かせください。
「天皇杯」というとサッカー等が有名ですが、天皇杯はいくつも部門があります。稲倉の棚田は農林水産祭「むらづくり部門」で最高賞の天皇杯を受賞しました。
「眺めるだけではない、カカワレルタナダ」というコンセプトを打ち出していたので、地域おこし協力隊の着任後はじめた「学校課外学習体験」や「ビオトープ&ネイチャーゲーム」等の自然学習の活動を整理したデータも資料制作の担当者に提出しました。

――玉﨑さんが整理したデータや活動のまとめがあって、資料担当の方も作りやすかったのではないですか。
棚田に関しては「ネタ」がたくさんあって「まとまらない」と言われました(笑)地域でとった賞なので、誇りになる繋がりが生まれて良かったと思います。

――受賞をきっかけに、取材や視察も増えたのではないでしょうか。
遠いところだと熊本県からいらっしゃり、活動の紹介をさせていただきました。来られた方々が「自分事」として捉えてもらえるようにお話ししました。

――棚田のオーナー制度について少し教えてください。
年明けにオーナー募集をインターネットで開始します。稲倉の棚田のオーナーは大きく2つに分かれていて、「棚田米オーナー」と「酒米オーナー」があります。棚田米オーナーは作業体験プラスお米がもらえ、細かく3つのプランに分かれています。酒米オーナーは作業体験プラス岡崎酒造さんの「亀齢(きれい)」が1ダースもらえます。
オーナーさんは圧倒的に県外の方が多く、人数も毎年右肩上がりに増えている状況です。

――もともと棚田オーナーだった玉﨑さんだからこその気づきや提案もあったのですね。
そうですね、プランの細分化やオーナーさん同士の交流の機会も作ることもできました。

――棚田オーナーになったことがきっかけで上田ファンになる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
はい、私自身上田に対して「第二の故郷感」があります。移住前、上田の天気をスマホで直ぐに見られるように登録して気にしていました。オーナーさんの半分以上は上田に滞在してお蕎麦を食べに行ったり、温泉に行ったりしている方がいらっしゃると思います。今までの「棚田ファン」は撮影目的の方が多かったのですが、農業体験だと家族連れの方もたくさん来てくださり、幅広い世代間の交流が生まれています。

――棚田での次の構想はありますか。
地域おこし協力隊での活動は通常3年ですが、新型コロナウイルス感染症の影響から特例措置があり、活動期間を1年延長します。次のステップとして起業も視野に入れて考えています。確定ではありませんが繋がりのある方々とキャンプ事業を本格化していく構想をみんなで楽しく話しています。

【参加者からの質問】

Q. 棚田オーナーになる方が以前に比べて増えてきた要因は何でしょうか。
A. 上田市と姉妹都市の練馬区の区報に棚田の情報を載せていただいたことや、様々なイベントのPR、ブランディングの打ち出し方も効果があったのかなと思います。

Q. 玉﨑さん流の上田での人間関係の作り方があったら教えて欲しいです。
A. 相手の懐に入り、一緒に作業・活動をするところから始めて、会話をして一緒に楽しむことが大切かなと思います。そうして「玉ちゃんの言うことだったら…」とおっしゃって下さるような関係性を築くことができました。

Q. 上田に来て苦労したことは何ですか。
A. 棚田独自の営農のやり方が継承されていなく、知識が途切れてしまっていたことです。例えば、水の管理方法です。うまく管理できず、結果的にお米の収穫量が減ってしまいました。そこで、元々棚田でお米を作っていた方に水管理のやり方を直接教わりに行き、データ化しました。市外から様々な技術を持った方々が関わってくださるようになり、移住3年目にしてようやくできたことです。地域外の力もとても大切です。

棚田の保全活動や情報発信には玉﨑さんのアイディアと実行力、データ管理、デザインのスキル等が凝縮されていると思いました。同じ移住者として、地域との繋がり方も学ばせていただきました。
本日はありがとうございました!

次回のうえだ移住テラス~talk cafe~は2023年11月11日開催予定です。
どうぞお楽しみに!